重松清「ワニとハブとひょうたん池」より
授業中も、休憩時間も、放課後も、あたしはずっと左胸に掌を当てて過ごした。
だいじょうぶ、心臓はちゃんと動いている。あたしは死んだりしない。自殺なんか絶対にするもんか。生きていくっていうのは、つらいんだから。そうだよ、楽しいわけないんだ。いままでの生活のほうがおかしかったんだ。赤の他人に囲まれてるんだもん、辛くないわけがないんだから。
こんなかんたんな理屈に、どうしてみんな気づかないんだろう。
授業中も、休憩時間も、放課後も、あたしはずっと左胸に掌を当てて過ごした。
だいじょうぶ、心臓はちゃんと動いている。あたしは死んだりしない。自殺なんか絶対にするもんか。生きていくっていうのは、つらいんだから。そうだよ、楽しいわけないんだ。いままでの生活のほうがおかしかったんだ。赤の他人に囲まれてるんだもん、辛くないわけがないんだから。
こんなかんたんな理屈に、どうしてみんな気づかないんだろう。