愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

山川方夫「海岸公園」より①

…じじつ、私には、後ろ暗く卑劣な自分だけに没入することこそ、私にふさわしい、私が愛し、信じられるただ一つの情熱のように思えた。私はいつも自分にくりかえした。私は卑劣だ、私は最低だ、自分のことしか考えない。いかにも、それは「卑怯者」の正義だろう。だが、結局わたしにはそれ以外に、頼りにできる人間のイメェジがなかったのだ。逆にいえば、私はそれだけを頼りにし、力にして生きつづけた。全ての「立派さ」への不信、確信への嘲笑、癒着の拒否。ひとときの興奮がさめると、私はいつもそこにかえる。私は、必死に、そういう「自分一人」への闘争をねがう後ろめたさにしがみついて、すべての切断に耐えてきたのだ。