愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

ジョン・バース「暗夜海中の旅」大津栄吉郎訳より

 おれそのものが実在しているのか、それとも夢にすぎないのか、ときどき疑ってみることもある。それにおれが実在するとすると、おれとは誰なのか?後世に向かって運んでるとされる遺伝形質のことだろうか。だがどうしておれは運ぶ器であると同時に運ばれる中身でありうるのだ?そういう疑問が、体を休めていると、おれの心にたえず浮かぶ。

 

おれは訊きたい、そもそも遺伝形質はだれのものなのだ?そしてだれに伝えるのだ?

 

この無目的な、獣的な、生の営みに終止符を打ってもらいたいのだ。〈彼女〉の歌に耳を傾けるのをやめてもらいたいのだ。愛を憎んでもらいたいのだ。

 

意味は全くないのだ。無意味な愛と、無意味な死があるだけなのだ。そういう思いを同じくしている人がいるなら、どなたであれ、俺よりもっと勇気をふるい立たせていただきたいのだ。暗夜海中の旅に訣別して、泳ぐのを辞め給え