武田泰淳「第一のボタン」
「僕はただ命令に従うだけです。それでいいじゃないですか。それ以外に僕には何もできやしないんだから。僕はもちろん機械です。それ以下の人間です。それで満足していますよ。だって僕みたいな能なしだって生きてかなきゃならないんですからね。能なしだって国民の一人です。生きていれば何か役には立っているんだ。たとえ役に立たなくたって、生きていく権利はあるはずなんだ」
「僕はただ命令に従うだけです。それでいいじゃないですか。それ以外に僕には何もできやしないんだから。僕はもちろん機械です。それ以下の人間です。それで満足していますよ。だって僕みたいな能なしだって生きてかなきゃならないんですからね。能なしだって国民の一人です。生きていれば何か役には立っているんだ。たとえ役に立たなくたって、生きていく権利はあるはずなんだ」