愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

コンラート・ローレンツ「八つの大罪」日高敏隆、大場更明訳より

 たえずいれかわり、互いにいりみだれては消えてゆく幻のような人間の姿の中に、われわれがもはや隣人の顔を認めることができないのは、近代的な大都会に群衆が集中して詰め込まれていることの中に明らかにその大部分の責任がある。隣人愛はおおぜいの隣人たち、ごく身近にいる人たちによって薄められて、ついにもはやその痕跡も認められぬほどになる。同胞に対するまごころからの感情や温かい気持ちを育もうとする者は、そういう感情をほんのわずかの友達に集中しなければなるまい。すべての人を愛すべきであるという要求がいかに正しく倫理的であっても、私たちは全ての人を愛するようには生まれついていないからである。そこで私たちはえらばねばならない。つまり私たちは、たしかにひとしく私たちの友情に値するたくさんの人を、感覚的に「遠ざけておか」ねばならない。

(中略)このように人間同士の接触を故意に絶ちつづけてゆくとそれが後述する感性の平坦化現象と結びついて、無関心という現象、新聞に毎日報じられているあのおそるべき現象が生まれる。