愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

レイ・ブラッドベリ「火星年代記」小笠原豊樹訳より

 俐巧ぶるのは嫌なことだ。と隊長は思った。ほんとうは俐巧だとも思わず、俐巧になりたくもないのに。うろうろと歩きまわって、計画を立てて、計画を立てたことで、なんだかエラくなったような気持ちになる。ほんとうは正しいかどうか分からないのに、正しいことをしているつもりになるのは嫌だ。一体われわれとは何物だろう。多数派か?それが答なのか。多数はつねに神聖なのか。つねに、つねに、つねに神聖で、ほんの一瞬たりとも誤りであることはないのか。千万年経っても正しいのか。そもそも多数とは何だろう。だれが多数なのだろう。多数は何を考え、いかに行動し、将来変るのかどうか。そしておれがこのいまいましい多数に加わったのは、一体全体どういうわけだ。おれは居心地がよくない。閉所恐怖症か、それともただの常識か。全世界が正しいと思っているとき、一人の人間が正しいということは有り得るか。もうこんなことを考えるのはよそう。這いずりまわって、勝手に興奮して、引金をひくのだ。それ、そこだ!