愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

稲垣足穂「弥勒」より

 もう三月であった。その日一日じゅう、鬼に責められた彼は夜になると勇気を出して、よろめきながらも銭湯へ出向くことにしたが、今度は大人連までもがじろじろと自分を見詰めているようであった。こんな異邦人のような寂しい気持ちはいったい何処から来るのだろうと、改めて自問せずにはおられない。この「前後を忘ずるばかり」な寂寥は、人間とは総てこのような寄辺のない者であると考えたところで、また自分だけに属する神経症のせいだろうと解釈してみても、度が過ぎていると思われるのだった。他の人々では決してこんなに厳しい度合いではないーーそうとしか思えない。多分、自分に根本的な欠陥があるのだと考えられたが、さてそれがどんな点なのかそこをどう扱ってよいのか、てんで見当がつかない。