愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

山川方夫「海の告発」より

 東京が近づいてくるのを、私は全身で感じとっていました。痛みか恐怖かのようにひりひりと疼くほどに、それをかんじました。

 そのとき、私には、ふいにいっさいを整理してしまいたいような気がしてきたのでした。一人になって、東京に帰りたい。一人ならば死ぬにせよ生きるにせよ、いざとなれば自分ひとりの始末だけをすれば責任が取れてしまう。ーー思うと、とたんに熱烈に私に一人きりになりたいという願い湧き上ってきたのでした。そうだ、私はこれをもとめて、あらゆるものからの曖昧な支配をのがれるため、夫をはっきりといない人、死んだ人にしてしまうためにこの旅に出たのだ、自分がひとりだということを回復するために旅に出たのだ。私ははっきりとそう思いました。身がるに、清潔に、体あたりで、私は一人だけで勝手に生きて行きたい。・・・

 私は、一人になりたかったのです。その、私が一人であることをさまたげるすべてのもの、それを始末してしまいたかったのです。