愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

山川方夫「愛のごとく」より

 私はいつも自分にだけ関心をもって生きてきたのだ。自分にとって、その他に確実なものがなにもなかったので、それを自分なりの正義だと思っていた。私はいつも自分を規定し、説明し、自分の不可解さを追いかけ、自分をあざけり軽蔑してくすくすと笑いながら、でも仕方なく諦めたみたいに、その自分自身とだけつきあってきたのだった。自分とだけつきあう。それが可能か不可能か、それは別のことだ。ただ私はそうしたいと思っていた。そのせいかどうかはしらない。私にはいつも自分はもっとも嫌いな他人だった。私は自分が誰も愛せないのを確信していたのだ。

 

 

「結婚」は、もちろん女やその夫への徳義上の行為ではなく、私の身のかわし方の技術としての行為なのだ。私には、誰とも夫婦になる資格なんてないのだから。

 多分自分には、そのほかの処理はできないのを私は予感していたのだ。それが他人――たとえば女や、その夫――にどんな不幸を招こうと、残念ながら私の知ったことではない。どうせ私にはどうすることもできない。弱いものは死ぬのだ。それが生命をもつあらゆるものの法則だ。私だって、勇者でも強者でもない自分について思うとき、「それでもおれはこれでせいいっぱいなんだ」という尻をまくった叫びと、「でも、なんてイヤらしい男なんだ」という悪罵と、この二つの声が聞えてくるだけのことだ。しかし、私は不幸ではない。たとえ異常にせよ、卑怯にせよ、不幸ではない。私は、他人のことは他人にまかせておく。それが「方針」だ。…私は、そう思っていたのだ。