愛を諦めろ!全国魔法使い連盟

自分は単独者である。にもかかわらず、社会のなかで他者と生きる。

中島 敦「かめれおん日記」より

 実際、近頃の自分の生き方の、みじめさ、情なさ。うじうじと内攻し、くすぶり、我と我が身を噛み、いじけ果て、それで猶、うすっぺらな犬儒主義(シニシズム)だけは残している。こんな筈ではなかったのだが、一体、どうして、又、何時頃から、こんな風になって了ったのだろう?兎に角、気が付いた時には、既にこんなヘンなものになって了っていたのだ。

 

 みんなは現実の中に生きている。俺はそうじゃない。かえるの卵のように寒天の中にくるまっている。現実と自分との間を寒天質の視力を屈折させるものが隔てている。

 

 考えてみれば、大体、今迄の生き方が、まあ何という無意味な生き方だったか。精神の統一集注を妨げることばかりに費やされた半生といってもいい。とにかく私は自分を眠らせ、自分の持っているものを打ち消すことばかり力を尽くして来たようなものだ。

 

 俺というものは、俺が考えている程、俺ではない。俺の代わりに習慣や環境やが行動しているのだ。